思い出の剱岳2009年9月6日~8日

 2022年8月3日

 今年の夏山もコロナで計画倒れになりつつある。早く気兼ねなく山小屋泊りをしたいものだ。セの剱岳山行の記録を読み返して登るのは無理でもせめて眺めに位は行きたいと思うのであった。

扇沢~剱岳~立山

日時・2009年9月6日(日)~8日(火) 早朝3:00発
メンバー セとナ他5名

第1日

 天候が定まらず7月から延び延び、ついに9月に入り込んだ。諦めかけた矢先ようやく安定、喜んで行くぞと連絡すれば、次の日あたりに今度は台風が。気になる進路、最終日が危うい。ま、いいか、その時は一泊で逃げ帰るか。

 早朝3時、彼女の運転で意気揚々と出発、佐野SAで交代予定。途中、寝ぼけ眼にボーっと近付く標識、涼しい顔して通り過ぎる運転手。
「あれっ、おい今の、たしか佐野藤岡ICだったよね」
「そうね・・、あれっ、ここで下りるんだったっけ?」
「あちゃ~」
 佐野SAは寝ていた私のためにパスしたと言うけど、しかし・・、今年だけでも何回も通っているのに。ま、次のICで下りてと。
ETCレーンを避けて一般レーンの収受員に「前で下りるの間違って下りちゃった~」
「それならまた一般レーンから戻っていいよ」だって。すごい!、
寛大な収受員、機転の効く運転手、常習みたいな。

 7時45分、無事扇沢の一番下の無料駐車場に到着。車はいっぱい。いろいろ準備して、9時30分発のトロリーバスに乗る。もったいないこの時間、嫌な人ごみ、早く室堂に着かないかなーとトンネル内の見えない窓を見る。


放水されている黒部ダムに虹がかかる

 室堂着11時10分、晴れ、立山連峰を眺めながら遊歩道で30分間の短い昼食。結局計画より30分遅れて11時40分に歩き出す。ブルーとグリーンがかったミクリガ池が、ブルーの空と周囲の山を写して静かだった。



そこから見下ろす地獄谷に向かい整備された道の大下り。ガスに注意の看板、濃度が上昇のアナウンスも聞え、でも、どうにもならない、シュウシュウと吹出す水蒸気や湧き出るお湯の間に道はあり。




前方には目指す別山乗越がやけに高くて、今からというのに見ただけで疲れてしまった。標高差約470mくらいか。
 風はなく天気も最高、後ろから太陽さんがあぶり出す。意外に急登で風もなく、汗はタラタラ、細めに休む。途中でたかちゃん、クロマメノキの実発見、おいし~い!、それからみんなで食べ歩き。続いてベニバナイチゴの実発見、もちろん食べて、にが~い。食べ物ばかり?・・じゃない、ちゃーんと花も発見していた。大丈夫、大丈夫。

 ようやく剱御前小舎に到着。これで今日の宿、剣山荘までは登らずに済むと安堵の一息。14時10分から20分まで休憩したが、みんなの頑張りで何時の間にか30分の遅れを取り戻していた。下方に室堂を俯瞰し、左に立山連峰を見上げ、行く先には山頂こそ雲に隠れているが剱岳が高く聳えている。

途中から行動を共にした節ちゃん(右から二番目)


 目的の勇姿に向かって山腹をトラバースぎみの快適な登山道を行く。
「剱岳は見えないですネー」と・・??。
「さっきから見えてるじゃん、あれ」
「あーっ、あれかー」と軽やかに言う。そう、これ方向音痴のえいちゃん。
もう・・、一人~ではや~ま~にやるなよー。

途中、剱岳の山頂が覗く。高~い。他のパーティから奇麗な人達❓とお誉めの言葉
「そう~よ、選りすぐりだから~」「そ~、剱岳に似合う女だけフルイに掛けて来たから~」と全くその気。おかげさまで吾輩にも羨望の眼差し。





 剣山荘にはほぼ計画どおり15時35分到着。受付を済ませ、靴を脱いで歩こうとしたら足が変な感触。見れば、あれっ、なんだこの靴下、登山用のじゃないじゃん、どうしたの?。どうりで変だった。歩いている時も妙に、足が動くようで痩せたのかな?と思ったり、ザックを背負うのに爪先を岩に掛けてヨイショとやったら足が攣りそうになったり・・
 
 部屋に案内された。7人個室?他は2段ベットというに。予約の成果だー。
早速生ビールでと、頭はそれだけ、からっぽ。飲食は外か食堂か制限あり、外でやったけど寒くて急いで飲んで、そこでもう一杯。
若いダンディな小屋番アルバイトの山ちゃと目が合ってピピッと来たあだっちゃん、早速ワインを注文、酌み交わす。ついでに可愛い娘にもどうぞ。二人ともグイと飲み干し、スッゲー、可愛い子ちゃん「私、酒豪よ」とケロリ。

 月が奇麗だと誰かに誘われてフリースを着て外に出る。ウォ~何だこれー、素晴らし~い!。鹿島槍から赤い大きな満月、神秘的~。この夜のクライマックス~。あだっちゃんの美声が流れる「月が~とっても~青いから~」?こんな古い歌知ってるなんてサバ読んでいない?お年・・うっとり~。
こんなに素晴らしいお月見を笠間の月下美人達と一緒に出来るなんて・・、見とれて、二度とないかも知れない光景に酔う。


 酔いつぶれて早く寝てしまった私、よく寝顔を見せるあだっちゃん、その夜はすこぶる元気で、その後もたかちゃんとえいちゃんと誘い合って、小屋番の目の合った山ちゃん達と盛り上がっていたらしい。

 撮った写真を後で見たら、写っていなかったあの素晴らしい月、ガッカリ。山に登るより疲れてしまった。ごめんねー。

第2日

 不要荷物を小屋にデポ、朝弁持って、4時20分、ヘッドランプで小屋を出る。一服剱への登りで赤くなって行く空、その中に五竜岳から鹿島槍ヶ岳が黒く影絵のようだ。前方には前剱が威圧するような高さで浮かび上がってくる。

 
 前剱に取付けば御来光は見えなくなるのは判っているが、ここで待つ訳にはいかない。
光線が差し込む剱沢を尻目に前剱の岩峰に取付く。クサリ場が断続的に続く急登を慎重にゆっくり登り、ついに前剱の山頂に立つ。そこからようやく平蔵のコルを隔てて剱岳が全容を現した。コルからでは標高差約330mの岩壁の登りで、そこに張付く人の姿が点々と見える。振り返れば大岩を越える人達の列がこちらに向かって進んで来る。立山方面の山並みも奇麗だ。眺めながら5時50分から6時まで十分な休憩を取る。

何時の間にか追付いて来た昨日道連れだった節ちゃん、そこから剣山荘に下るまで仲間の一員のようだった。笠間の美女に優しくされてはなー、誰でもそうなるよ。

 いよいよ核心部に向かって出発。カニのタテバイは混雑していなくてラッキー。下から見える範囲では危険そうなところも見当たらず、慎重にさえ登ってくれれば大丈夫と確信する。先に登って見ていると、みんなもクサリには慣れてきたし余裕が伺える。何時の間にかカニのタテバイをあっさりクリアー、さすが笠間の山女、拍子抜けかもねー。山頂に一歩近付く。

 

7時35分、みんなは思ったより難無く山頂を踏む。晴れ、風もなく、雲もなく、北アルプスの山々、信越の山々、白山、全ての山々を俯瞰する。




そしてその時誰もが煩わしい現世から抜け出したように、単純で自然な微笑みを交わした。みんな素直な良い表情だった。朝食弁当もサケを主にした単純なおかずだったが、どんな高級料理も及ばない美味しさだった。

 長居も出来ない。ここを下り、見えているあの別山への急登を越えて、今夜の宿、内蔵助山荘まで行かねばならない。見れば嫌になるほど遠い道程だ。8時10分下山開始。カニのヨコバイが大変というけれど、我ら笠間の山女には全く気遣い無用、もう余裕たっぷり。




急な梯子も、大岩なんかも。恐いもの知らず??。けいちゃんとミノさんのおしどり夫婦に横車、ニヤニヤしながら、もちろん景色を見ながらたっぷり時間を掛ける。何時の間にか前剱に帰って来てしまった。そこから振り返る剱岳はやっぱり立派だった。

 剣山荘着11時35分。ここでデポした荷物を回収して、昼食をオーダーする。カレーラライスと中華丼だが美味しかったね。たまにはこんな昼食も良いよね~。
12時05分、小屋番に御世話になったお礼を述べて、さあー、出発。
しかし、正面に見えているあの高い尾根に登るかと思うと、萎えそうな二人目の自分がいて、時々頭を持ち上げて来る。暑くて風は無いに等しく、時々頬を撫でるような、剱沢から吹きあがって来る涼風に息を吹き返す。また、遠くなって行く剱岳や剣山荘を振返るたび、別山乗越の山荘との標高が近くなるのを見るたび、次の一歩に繋がる。
14時05分、稜線に出て、14時20分、ついに別山に着く。



 ここで終りではない、ただ一区切りだけ、先をみれば鞍部を越えた先にまたもや真砂岳への登り、そしてその先に内蔵助山荘が見えている。でも早めに小屋に着ける目鼻はついた。
14時35分別山を発つ。

 安堵からゆっくり歩き15時40分内蔵助山荘に着く。ここから剱岳は別山の肩から八ッ峰と思われる尾根が見えるだけ。展望台まで行くと山頂が見えていたが、どうにも別山が邪魔のようだ。受付を済ませ、そのまま外で乾杯を、宴会をとの段取りだった。
しかし、あの暑い別山への登りでの蜃気楼のようだった生ビールが無い?、まさか?、無い。仕方なし、缶ビールでと。だが、結構冷えていて、よしよし。
持参の焼酎瓶には剱沢キャンプ場で汲んだ水が、残り少ないウイスキーの瓶をみれば、この次はもう一本持って来るぞーと心に誓う。小屋の夕食もまたも格別、味噌汁もうまく、ご飯もうまく至福の一時。

 その日の夕暮れはまたドラマチックに変化した。何時の間にか室堂を覆った雲海の一部が、真砂岳と別山の鞍部から溢れて流れ出し、滝雲となり、その上に真っ赤な太陽が沈んで行った。今夜も鹿島槍ヶ岳付近から登るあの素晴らしい月も期待したが、見られそうもなく部屋に入った。部屋は男女別の個室が用意されていて、ここでも予約の効果が大きかったことを感じる。







 その夜、月の光に輝く雲海が奇麗で感動的だったと聞かされた。男どもは寝てしまっていたが、その後、強風にうなる音だけはしっかり聞いた。明日の行動を考えながら。しかし、それも朝起きてから考えようと何時の間にかまた寝入ってしまった。

第3日


 心配した風は弱まっていて一安心。弱い冷たい風が吹いていた。鹿島槍ヶ岳の右から昇って来る御来光を静かに迎え、小屋の朝食タイム5時40分。通常5時30分となっていたが、御来光に合せた小屋の粋な計らいと思われた。やっぱり朝食もうまかった。弁当では冷たく味噌汁もない、やっぱりいいねー。



 小屋番にお礼を言って、6時25分、残りの立山縦走に出発。真砂岳を越えて下り、富士の折立への登りは急登だったが、昨日の登りを思えばなんてことない。ちょっくら登って、前を見れば、なーんだ、大汝山も雄山もすぐそこ。
振り返れば別山の尾根越しに剱岳が山頂を見せて、山腹を雲がゆらゆら棚引いている。我々を見送っている。





 「雄山の山頂で御願いしたらね、きっと子供が生まれるよ」「えー、私もう子供なんていらないよー」・・??「違うよ、孫だよ」「あ、そうか・・そうだよねー、ハハハ」・・
これは彼女とえいちゃんの会話だ。

 雄山着8時15分。山頂で祭司が待っている。立派な社務所で500円払って山頂へ、石畳の上に座って神妙に御祓いを受ける。太鼓がなって、祝詞を聞いて、御神酒を頂戴する。もっと呑みたかったよね。これをやらなければ山頂を踏めないのはどういうものかと思ったが、ま、これだけやってくれるならばと妙に納得。8時45分、いよいよ最後の下りに取付く。



 雄山から岩屑、岩塊状の下りで、ルートは巾広く、すれ違いは進路を自由に変えながら、ダートの道を走る要領で。結構な急下り、登る人はお気の毒って感じ。一ノ越9時25分着。花など愛でながら室堂着10時30分。名水に喉を潤し、振返り、またねー剱岳、立山。






 アルペンルート発10時45分に間に合う。黒部ダムを覗き見ながら扇沢着12時20分だった。腹はへっているが、早く温泉で奇麗になって、それから一杯やって、それからだね~昼食は。

 大町温泉薬師の湯は空いていたし、広くて気持ち良かった~。休憩室で生ビール飲んで、とりあえずソバなどで腹ごしらえして、やっと落着く。

帰路、車の中で盛り上がった。けいちゃんが洗っている時、ブラジャーを付けたまま浴場に入って来た人が鏡に写り、見れば○○ちゃんだったとか。
言ってあげると慌てて脱ぎに出て行ったという。ちなみにパンツははいていなかったそうで、パンツもはいていたらどうしようもないとはみんなの弁。
○○ちゃんに言わせると、その時のけいちゃんの堪えられない笑い声が脳裏から離れない様子だ。

双方の立場で考えると・・やっぱり・・ふっふっふー。
吾輩も、○○ちゃんがブラジャー付けてしなやかに風呂に入って行く姿が目に浮かんで、
やっーぱり、道間違えてしまったじゃ~ん。
 以前、脱衣所にパンツを忘れて来た人もいるからね。その時ケタケタ笑っていたが、今日はやっちゃった~~。 
今他人ごととケタケタ笑っている人も、この次はあなたの番かもね。

 車の中で電話がなるえいちゃん。
「え~っ!、孫が・・、出来たって??、え~!、4月?ほんと~」
なーんと、素晴らしい、・・・おめでとうー。
 無事帰宅出来て、全てが劇的、言うことなし。これぞほんとうのめでたし、めでたし。

咲いていた花
ヤマハハコ、タカネヤハズハハコ、ミヤマアキノキリンソウ、ウサギギク、ミヤマ?トリカブト、ウラジロタデ、イワツメクサ、イワギキョウ、ミヤマリンドウ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイモンジソウ、ミヤマコウゾリナ、タカネヒゴタイ、イワ?オトギリ、カライトソウ、ミヤマシシウド、タテヤマ?アザミ、ヨツバシオガマ

なっていた実
クロマメノキ、ベニバナイチゴ

その他
チングルマの穂の多さに花期の美しさが想像出来る


いつの間にか仲間になっていた節ちゃん、写真を送ると後日、皆さんでとウナギパイと手紙が送られて来ました。
全国第3位の売り上げだそうです。

4 件のコメント :

  1. どうしてこんな怖い所に登るんでしょうね。しかも皆さん楽しそう! 信じられません。
    そんなこと言いながら楽しんで拝見してますょ~!(笑)

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    1. 楽山紀行さん、こんにちは。
      怖いもの知らずと言うか若かったのでしょうね(^^ゞ
      今では怖くて登れませんよ~見るだけです(笑)
      一緒に楽しんで下さいね~(^^)/

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  2. こんにちは
    せとなさんの過去記事さかのぼって拝見したら、ちょうど思い出の剱岳をアップされていてびっくりです。
    山頂では天候に恵まれて最高でしたね。
    ガスと雨で何も見えなかった私にとっては羨ましい限りです。
    その後の立山縦走も雲海や御来光など絶好のコンディションに恵まれましたね!
    感動がよみがえってきましたよ!

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    1. hutatuyanosikiさん、こんにちは。
      どこにも行けない苛立ちに昔歩いた山の思い出に浸ってました😢
      そんな時に私達が計画倒れになってしまった裏剱ブログを読んで
      内心計画倒れで良かったと思いました(^^ゞ
      危険と隣り合わせの山、体力を使い切って歩いた山は
      いつまでも心に残りますよね。
      私達が歩いた時はお天気が良かったので最高でした。
      今度は山頂からの景色を是非味わって下さいね。

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